マンションン売却時の減価償却はこう決まる!譲渡所得を算出時のポイント
マンションの売却時に「減価償却」という言葉を聞く機会があると思います。この減価償却は譲渡所得を算出するときに利用する数値ですが、あまり詳細を知らない方も多いです。
しかし、実は減価償却費用は、譲渡所得税額を左右する大事な費用なのです。そこで今回は、譲渡所得の計算に必須な「減価償却」について解説します。
この記事の目次
なぜ減価償却が大切か
なぜマンション売却時の減価償却が大事かというと、「譲渡所得」を計算するときに欠かせない要素だからです。つまり、減価償却の費用によって、譲渡所得の金額が上下するということです。
譲渡所得税とは?
マンションを売却した時に利益が出たら、その利益のことを「譲渡所得」といいます。その譲渡所得に対してかかる税金が「譲渡所得税」なのです。譲渡所得税の税率については後述しますが、税金の中でも税率は高い方です。
理由は、譲渡所得は「余剰所得」だからです。サラリーマンの「給与所得」や個人事業主の「事業所得」ではなく、生活においてはプラスαの金額だから税率は高くなるのです。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の計算方法は以下の通りです。
「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時のマンション価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用))」
つまり、単純に売却価格から購入時の価格を差し引くのではなく、そこに売買時の諸費用と減価償却費を加味しなければいけないということです。上記の式を見てもらえると分かる通り、減価償却費が低いほど、譲渡所得も低くなります。
譲渡所得税率
つづいて譲渡所得税の税率についてです。譲渡所得税率は、その物件の保有期間によって変わります。譲渡(売却)した年の1月1日時点で、その物件の保有期間が5年を超えるときは「長期保有」であり、5年以下であれば「短期保有」といいます。
長期保有
長期保有の時の譲渡所得税率は以下の通りです。
- 所得税:15%(復興特別所得税2.1%)
- 住民税:5%
たとえば、譲渡所得が1,000万円であれば、所得税が150万円、復興特別所得税が3.15万円、住民税が50万円になり、合計約203万円が譲渡所得税額になります。
短期保有
短期保有の時の譲渡所得税率は以下の通りです。
- 所得税:30%(復興特別所得税2.1%)
- 住民税:9%
たとえば、譲渡所得が1,000万円であれば、所得税が300万円、復興特別所得税が6.3万円、住民税が90万円になり、合計約396万円が譲渡所得税額になります。
上記のとおり、長期保有は短期保有のときと比べて、ほぼ半分の税率になります。なぜ、長期保有の方が税率は低いかというと、居住用不動産への負担軽減が目的です。居住用不動産であれば、5年超住むのは一般的なので、長期保有の場合には税率を低くしているのです。
マンション売却時にかかる税金については、以下の記事をご覧ください。
減価償却について
つづいて、減価償却について解説します。減価償却費を算出するためには所定の計算式があります。その式に当てはめて減価償却費を計算するというワケです。
減価償却とは?
そもそも、減価償却とは、「経年劣化に伴い不動産の価値は下がっていく」という考えを元に、その不動産が実際にどの程度価値が下がったかを数値化したものです。
そのため、経年劣化することのない土地には減価償却費はかからず、マンションや一戸建ての建物部分、ビルなどに減価償却は適用されます。
減価償却費用の計算方法
減価償却費用の計算方法は「定額法」と「定率法」の2種類あります。ただ、平成10年4月1日以降に建築された建物については、「新定額法」が適用になるとルールで決まっているので、今回は「新定額法」をご紹介していきます。
新定額法とは、簡単にいうと「毎年決まった額(定額)を減価償却費として設定し、その金額を不動産の価値から減らしていく」という計算方法です。
計算式は、「購入金額×0.9×償却率」という式になります。この「償却率※1」とは、不動産の構造によって異なります。理由は木造などの構造よりも、鉄筋コンクリートや軽量鉄骨造りの方が耐久性は高いからです。
たとえば、主要構造である木造と鉄筋コンクリートは、「木造:0.046」「鉄筋コンクリート:0.022」と償却率が決まっています。
そのため、購入金額が5,000万円の鉄筋コンクリート造のマンションであれば、「5,000万円×0.9×0.022=99万円」が1年間の減価償却額になります。つまり、1年間で110万円分、資産が目減りするということです。
※1減価償却資産の償却率表
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf
実際の計算
では、実際に譲渡所得税を計算してみましょう。仮に以下のような条件であったとします。
- 鉄筋コンクリート造の築12年(保有期間12年)のマンション
- 売却金額5,500万円 売却時諸費用190万円
- 購入時の価格4,400万円 購入時の諸費用額 150万円
減価償却の計算
まず、計算式が複雑な減価償却から計算します。鉄筋コンクリート造の償却率は0.022でしたので、購入金額に0.9を掛け、その後に0.022を掛けると約87.1万円になります。
これが「1年間の減価償却額」になるので、これが築12年で約1,045万円になります。
譲渡所得と譲渡所得税額の計算
つぎに、上述した譲渡所得の計算式に充てはめると、「(5,500万円-190万円)-(4,400万円+150万円-1,045万円)」となり、譲渡所得は1,805万円です。
この譲渡所得1,805万円を譲渡所得税率に当てはめると以下のようになります。
- 所得税:1,805万円×15%=約271万円(復興特別所得税:271万円×2.1%=約5.7万円)
- 住民税:1,805万円×5%=約90万円
上記の通り、合計約366.7万円が譲渡所得税額になります。
実際の譲渡所得税
前項の通り、譲渡所得税率は非常に高い税率になります。しかし、実際に居住用不動産において、売却金額が購入時金額を上回ることは少ないです。当然、築年数が経つほど資産価値が落ちてくるので、中古で売却するときの金額も下がるからです。
また、居住用不動産であれば、「3,000万円の特別控除」という税制優遇が利用できます。この税制優遇は、平たくいうと「譲渡所得を3,000万円控除します」という制度です。
つまり、先ほどの1,805万円の譲渡所得も、この制度が適用できれば譲渡所得が0円になるということです。
この「3,000万円の特別控除」を利用するには、さまざまな条件があります。詳細は国税庁ホームページ※2をご覧ください。
※2国税庁ホームページ マイホーム売却時の特例
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
まとめ
このように減価償却について以下を理解しておきましょう。
- 減価償却は譲渡所得を計算するときに必要
- 譲渡所得税は高税率
- 実際の入居用不動産の売買時には譲渡所得税がかかることは少ない
上述のように、減価償却はあくまで「譲渡所得税」を計算するときに必要になる費用です。そのため、減価償却単体での計算方法を暗記しておく必要はありません。
ただ、減価償却費が大体どのくらいになるかを把握しておかないと、もしかしたら高額な譲渡所得税がかかる場合があるのです。
そのため、特に、購入時よりも明らかに高い金額で売却できる物件を保有している人は、減価償却には気をつけて譲渡所得税を計算しましょう。
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