財産分与でマンションを売却する方法
不動産を財産分与するときには、色々な方法があります。しかし、どんな手段で売却するか、何に気を付けて売却するかで、物件の金額も売却スピードも大きく変わってくるのです。
そのため、まずはどのような売却方法があるかを知ることが大切です。その上で、それぞれの注意点を加味しながら、上手にマンションを売却していきましょう。
この記事の目次
財産分与とは
財産分与とは、その名の通り、財産を分け合うことをいいます。一般的には、離婚時に「夫婦が所有している財産をどう分けるか」という意味でつかわれることが多いです。ただ、不動産関係の財産分与に関しては、しばしば以下のような意味合いでもつかわれます
- 債務整理
- 離婚や相続
離婚時と相続時の財産分与は性質が似ている部分もありますので、この2つについては一緒に説明します。また、債務整理に関しては、離婚・相続とは完全に別物なので、別途解説します。
債務整理
そもそも債務整理とは、色々な借金(債務)を1つ1つ整理していくことです。方法としては、複数の借金を1つの金融機関にまとめたり、担保としているものを売却することによって、債務の一部を返済したり免除したりすることをいいます。
不動産においての債務整理は、住宅ローンが残っているにも関わらず物件を売却することをいいます。それを残債の返済に充てることが目的です。そもそも残債がある状態では不動産の売却はできません。
なぜなら、担保として「抵当権」が設定されているからです。その抵当権を抹消するためには、残債を完済することが絶対条件なのです。
しかし、債務整理をするために、残債がある状態でも物件を売却したいときもあります。そんなときには「競売」と「任意売却」の2つの方法で物件を売却するのです。
競売
競売とは、住宅ローンの支払いができなくなったときに、債権者である金融機関が、担保としている不動産を強制的に売却することです。競売は裁判所の下で行われる正式な手続きになりますので、以下のような手続きを踏む必要があります。
- 催促状が届く
- 代位弁済
- 競売がはじまる
- 入札開始
- 落札、強制退去
催促状が届く
まず、住宅ローンを滞納してしまうと、金融機関から催促の連絡がきます。はじめは電話やメールで催促されますが、2~3か月住宅ローンを滞納すると催促状が書面で届きます。
代位弁済
電話やメールでの催促にも「催促状」にも応じずに、3か月~半年ほど滞納し続けると、債権者が金融機関から保証会社に代わります。
保証会社とは、保証人の代わりのような機関なので、保証会社が金融機関に残債を代わりに返済するのです。そのため、保証会社が新たな債権者に代わる(代位弁済)のです。
競売がはじまる
保証会社が新たな債権者になっても、当然ですが借金は残ったままです。滞納をしてしまっているので、保証会社はローン借入者に一括返済を求めます。
しかし、この一括返済に応じることができなければ、保証会社が裁判所に競売の申し立てをするのです。申し立てが裁判所に受理され、裁判所から「競売開始決定通知書」が送られてきたら、競売ははじまります。
入札開始
裁判所が物件調査を行い、その後「期間入札決定通知」という書面が届きます。その後に、「競売している」という情報が一般に公開されて入札が開始されます。入札は基本的には誰でもできます。
ただ、「債務者(ローン滞納者)」や「過去に入札してトラブルになった人」は入札できません。
落札、強制退去
入札によって落札者が決定すれば、ローン滞納者は物件を落札者へ引き渡さなければいけません。つまり、強制的に物件を退去させられるのです。
競売のメリット・デメリット
不動産を債務整理として競売という手段をとるのは、メリットはなくデメリットしかありません。具体的なデメリットは以下の3点です。
- 価格が下がる
- 周囲に知られる
- 強制退去
価格が下がる
まず最も大きなデメリットは価格が下がることです。一般的な売却とは異なり、売主の意思は全く加味されずに売却が進みます。そのため、相場価格の6~7割程度で成約することが多いです。
そうなると、残債を全て返すことは難しく、家も失い借金は残るという最悪の状態になってしまいます。
周囲に知られる
先ほどいったように、競売をすると一般に広く情報が公開されます。金融機関者でもない限り、競売情報を見ることはあまりないと思いますが、知り合いに競売で家を売却することが知られるというリスクはあります。
家が競売に出されるときは、住宅ローンを滞納しているときくらいしかないので、あまり良い印象は持たれないのです。
強制退去
また、競売になると家から強制退去させられます。そもそも住宅ローンを滞納しているということは、資金がないということです。その状態で、時期も自分で選べずに退去するということは、住む家がなくなってしまうことを意味しています。
任意売却
結論からいうと、競売はデメリットが多すぎるので、不動産の債務整理は任意売却をした方が良いです。任意売却とは、残債があるにも関わらず物件を売却できるように金融機関から許可を得て売却することです。
任意売却のメリット
任意売却のメリットは、通常と同じような売却方法を取れるということです。そのため、競売のように相場価格を大きく下回ることがないので、うまくいけば残債を完済できるかもしれません。
完済できなかったとしても、競売のときよりは高く売れるので、残債を確実に減らすことはできます。
任意売却のデメリット
ただ、任意売却には大きなデメリットがあります。それは、「信用情報に傷がつく」という点です。信用情報とは、ローン滞納などの記録を履歴として残しておくことです。
この信用情報を金融機関はチェックすることができるのです。「任意売却」の履歴がある限り、ほかのローンを組むことはほぼ不可能です。
また、クレジットカードの審査にも信用情報が必要なので、任意売却をするとクレジットカードすら作れなくなる可能性があります。この信用情報は5~8年は消えないので、任意売却には将来的なリスクがあることを理解しておきましょう。
任意売却のポイント
任意売却のポイントは、不動産コンサルタントに依頼することです。任意売却は金融機にとっては、特にメリットはありません。競売のときのように保証会社から残債を返済された方が手続きは楽で、全額返済してもらえるからです。
そのため、金融機関ときちんと協議できるプロの不動産コンサルタントに依頼するのがベストな方法です。
離婚・相続について
離婚や相続時の財産分与は、いくつか選択肢があります。結論からいうと、いずれの場合でも物件を「売却」して財産分与する方が良いです。
名義を共有する危険性
仮に名義を共有するとします。離婚時なら夫・妻、相続時なら親子や兄弟同士が一般的です。そのときに、物件を売却したいと思ったり、賃貸したいと思ったりしても、名義人全員の許可が必要になるのです。
離婚時であれば離婚した後にも関係性を継続する必要があります。
一方、相続時も親子や兄弟同士で意見が合わなければ、なかなか売却が進みません。そのため、物件を売却して現金で財産分与した方が良いのです。
住宅ローンの滞納
これは、主に離婚時の話です。たとえば、夫が住宅ローンを支払っているマンションに、慰謝料として妻が住むとします。そのとき、将来的に夫が債務不能の状態になってしまえば、前項のように競売や任意売却になる可能性があるのです。
いずれの場合も物件は手放し、物件の売却金額は全て残債の返済に充てられます。つまり、せっかく慰謝料としてもらったマンションを退去させられる上に、お金は1円も入ってこないのです。
そのため、離婚時には不動産を財産分与するのではなく、売却して現金を財産分与する方が良いのです。
売却時の注意点
離婚・相続時に物件を売却する場合の注意点は、「調整力」のある不動産会社を選ぶということです。調整力があるとは、夫婦間や兄弟間の「調整」という意味です。離婚時や相続時には、それぞれ事情が異なります。
「少しでも高く売りたい」と思っている人もいれば、「少しでも早く売りたい」と思っている人もいます。そのため、その人達を調整する能力が必要なのです。
売却価格と引渡し時期
まずは、利害関係者全員の売却価格と引渡し時期を調整しましょう。「調整」とは、この2点を売却前に合意しておくということです。売却金額と引渡し時期を合意していないと、購入検討者からの値引き交渉へ対処ができません。
そうなると、購入検討者の交渉に対して、迅速に回答ができないのです。迅速に回答ができないと購入検討者は離れていってしまうので、交渉決裂になることが多いのです。
必ず全員と会う
不動産会社を選定するときには、必ず営業マンには利害関係者全員で会っておきましょう。不動産会社を決めるときは、机上査定をした後に訪問査定をして不動産会社を選定します。
その訪問査定の時に全員を呼んでおき、不動産会社の営業マンと顔合わせをしておくと良いでしょう。
どうしても「相性」というものがありますし、営業マンも一度顔を合わせておいた方が、連絡するときのハードルは下がります。そのため、必ず営業マンと全員が会ってから不動産会社の選定をしましょう。
まとめ
財産分与でマンションを売却するときには、以下の点に気を付けましょう。
- 債務整理のときは競売ではなく任意売却をする
- 任意売却も信用情報という大きなリスクがあること理解する
- 離婚・相続時には物件を売却してから財産分与する
- 不動産会社は「調整力」も加味して選ぶ
このような点に注意して売却すれば、マンションを高く早く売りやすいです。特に、利害関係者が多い物件の売却はトラブルになりやすいです。
そのため、事前にきちんと取り決めておくことと、調整力のある不動産会社を選ぶことを特に意識しましょう。
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